素数って何だ?

0から9までの10個の数字。これらの組み合わせでできる無数の数。数にも色々な表情があります。

        123456789 順に並んだ数

        123454321 「しんぶんし」のように始めから読んでも後ろから読んでも同じ数

まだまだ私たちの周りには、日常お目にかかる数がたくさんあります。

これらの数の中で、1とその数自身以外はどんな数でも割れない数があります。

それが『素数』といわれる数です。

次の『エラトステネスのふるい』の研究は、1982年1月17日に東京文化会館大会議室において東京珠算教育連盟主催の研究発表会が開催された際、私が「おもしろい 答えになるかけざん」を発表するために研究した素数の見つけ方です。

『エラトステネスのふるい』の研究

 1より大きい整数は、素数と合成数に分類することができます。素数とは、1より大きい整数の中で、1とその数自身以外に約数をもたない数をいいます。合成数とは、 素数でない数、つまり1とその数自身以外の約数をもつ数をいい、「a×b」の式で表すことができます。(aもbも、0および1ではない)

 次に「数学小事典」(矢野健太郎編)を参考に『エラトステネスのふるい』という素数の見つけ方を行ないましょう。

 エラトステネスという人は、B.C.275〜194のギリシアの数学者で、詩人でもありました。この素数の見つけ方は、次のように順々に合成数をふるい落としていく方法です。 これから調べるのは、1〜50までの整数です。そこで、調べる最後の数50の平方根が7〜8の間にあるので、今回は7の倍数まで消せばよいことになります。では、エラトステ ネスのふるいを始めましょう。

 1  2  3  4  5  6  7  8  9 10
11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
31 32 33 34 35 36 37 38 39 40
41 42 43 44 45 46 47 48 49 50

手順

(1)まず、1は素数でないから消します。

(2)2を残して、2の次から二つ目ごとに並ぶ数を消します。これによって2の倍数は全部消されます。

(3)3を残して、3の次から三つ目ごとに並ぶ数を消します。これによって3の倍数は全部消されます。

(4)5を残して、5の次から五つ目ごとに並ぶ数を消します。これによって5の倍数は全部消されます。

(5)7を残して、7の次から七つ目ごとに並ぶ数を消します。これによって7の倍数は全部消されます。

(6)1〜50の整数のうち素数は、上の作業によって残った数です。

以上が『エラトステネスのふるい』という方法ですが、省略できるところがあります。

 まず、2の倍数(偶数)は最初から書かないで、奇数を並べます。また、1の位が5になる数は5の倍数ですから、これも書かないようにします。すると次のようになります。

 

研究課題1・・・2の倍数(偶数)と5の倍数を省略する

2と5は素数

1 3 7 9
11 13 17 19
21 23 27 29
31 33 37 39
41 43 47 49

手順

(1)まず、1は素数でないから消します。

(2)3の倍数を消すには、3を2倍した6を3に加えます。3+6=9で9を消します。次は、9+6=15です。15は書かれていません。次は、15+6=21で21を消します。次は、 21+6=27で27を消します。・・・このように、次々と6を加えた数を消していけば、3の倍数を全部消すことができます。

(3)同様に、7の倍数を消すには、7を2倍した数14を次々と加え、その数を消していきます。

このように、一の位が1・3・7・9の数を並べておくと、2の倍数と5の倍数が省略できて、早く素数を知ることができます。

 

 それでは、エラトステネスのふるいと今の方法との合成数の消し方を比較してみましょう。

 

ある素数をPとします。

エラトステネスのふるい 2の倍数を省略した方法
 P+P=2P  P+2P= 3P
2P+P=3P 3P+2P= 5P
3P+P=4P 5P+2P= 7P
4P+P=5P 7P+2P= 9P
5P+P=6P 9P+2P=11P

 左の場合は、偶数倍された数、つまり2の倍数まで消していくことになります。右の場合は、ある素数PにPを2倍した数を次々と加えることにより、ある素数の奇数倍 の数がわかります。

 それでは、Pに素数を代入してみましょう。

P=7の場合

エラトステネスのふるい 2の倍数を省略した方法
 7+7=14  7+14=21
14+7=21 21+14=35
21+7=28 35+14=49
28+7=35 49+14=63
35+7=42 63+14=77

 左の場合は、14,21,28,35,42・・・と消していきます。つまり、7の2倍、3倍、4倍、5倍、6倍・・・というように、7の倍数を消していくわけです。

 右の場合は、21,35,49,63,77・・・と消していきます。これは、7の3倍、5倍、7倍、9倍、11倍・・・というように、7の倍数を消していくわけです。

 それでは、次に2の倍数のほかに、3の倍数も省略した方法を行なってみましょう。

研究課題2・・・2の倍数と3の倍数を省略する

 3の倍数を省略するために、次の「X」と「Y」に整数を入れていきます。

3X+2 ・・・ Xは奇数

3Y+1 ・・・ Yは偶数

X=1のときは5、Y=2のときは7、X=3のときは11、Y=4のときは13・・・これを並べると次のようになります。

横に10個ずつ並べることにより、上段と下段の数の差はそれぞれ30になります。

 

5 7 11 13 17 19 23 25 29 31
35 37 41 43 47 49 53 55 59 61
65 67 71 73 77 79 83 85 89 91
95 97 ・・・              

こうすれば、2の倍数と3の倍数を省略することができます。また、水色で塗られた縦の列は5の倍数ですので省略します。それでは次にこれを使った素数の見つけ方を 行ないます。

7 11 13 17 19 23 29 31
37 41 43 47 49 53 59 61
67 71 73 77 79 83 89 91
97 ・・・              

 2と3と5は素数であることがわかっているものとします。

手順

(1)まず、7の倍数を消すために7を2倍した数14と、4倍した数28を用意します。

(2)最初は4倍したほうの28を7に加えます。7+28=35ですが、これは5の倍数ですので書かれていません。

(3)次は2倍したほうの14を35に加えます。35+14=49で49を消します。

(4)次は4倍したほうの28を49に加えます。49+28=77で77を消します。

(5)次は2倍したほうの14を77に加えます。77+14=91で91を消します。

 このように、2倍した数と4倍した数を交互に加えていき、その数を消していきます。同様に、11の倍数を消すには、22と44を交互に加えて消していきます。ところが、 2倍した数と4倍した数のどちらを先に加えたらよいのかが問題です。これについてはあとでとりあげることにします。

 それでは、前に行なった「2の倍数を省略した方法」と今回の「2の倍数と3の倍数を省略した方法」との合成数の消し方を比較してみましょう。

ある素数をPとします。

2の倍数を省略した方法 2の倍数と3の倍数を省略した方法
  P+2P= 3P 3の倍数
 3P+2P= 5P   P+4P= 5P
 5P+2P= 7P  5P+2P= 7P
 7P+2P= 9P 3の倍数
 9P+2P=11P  7P+4P=11P
11P+2P=13P 11P+2P=13P
13P+2P=15P 3の倍数
15P+2P=17P 13P+4P=17P
17P+2P=19P 17P+2P=19P
19P+2P=21P 3の倍数

右の「2の倍数と3の倍数を省略した方法」は、ある素数Pを4倍した数(4P)と2倍した数(2P)を交互に加えることにより、3の倍数を省略することができます。

 それではPに素数を代入してみましょう。

P=7の場合

2の倍数を省略した方法 2の倍数と3の倍数を省略した方法
  7+14= 21 3の倍数
 21+14= 35   7+28= 35
 35+14= 49  35+14= 49
 49+14= 63 3の倍数
 63+14= 77  49+28= 77
 77+14= 91  77+14= 91
 91+14=105 3の倍数
105+14=119  91+28=119
119+14=133 119+14=133
133+14=147 3の倍数

 左の場合は、21,35,49,63,77,91・・・と消していきます。つまり、7の3倍、5倍、7倍、9倍、11倍、13倍・・・というように、7を奇数倍 した数を消していくわけです。

 右の場合は、35,49,77,91,119,133・・・と消していきます。これは、7の5倍、7倍、11倍、13倍、17倍、19倍・・・というように、 7の奇数倍から7の3N倍(Nは奇数)を除いた数を消していくわけです。

 しかし、ある素数Pの二乗より小さい合成数は、Pより小さい素数の倍数として消されています。P=7を例にすると、7を二乗した49までの7の倍数は、14, 21,28,35,42の五つですが、14,28,42は2の倍数、21は3の倍数、35は5の倍数というように、いずれも7より小さい2,3,5の倍数です。 したがって、7の倍数を消すには、7を二乗した数49から消していきます。では、次に消す数は何か?ここで、前に問題となった「2倍した数と4倍した数のどち らを先に加えるのか」を考えてみましょう。

7の倍数を消す

7のとなりに書かれた数11から7を引きます。それに7をかけた数28を49(7を二乗した数)に加えます。そして、77を消すわけです。これを式にあらわすと、 7+7×(11−7)=77 となります。この次からは14と28を交互に加えた数を消していきます。

11の倍数を消す

同様に、11の倍数を消すには、11を二乗した数121を消します。次は、となりの13から11を引いて11にかけた数22を121に加え、11+ 11×(13−11)=143 で143を消します。次は、143+44=187で187を消し、187+22=209で209を消すという具合です。

ある素数をPとし、そのとなりに書かれた数をP’として、Pの次に何を消すのかをまとめると次のようになります。

     P+P×(P’−P)

=P+P×P’−P

 

=P×P’

上のようにPの次に消す数は、P×P’とまとめられます。つまり、ある素数Pとそのとなりに書かれた数P’をかけた数を消せばよいわけです。

そして次に消す数ですが、(P’−P)には2の場合と4の場合があります。(P’−P)が2のときはP×P’を消した後、P×P’+4Pを消します。また、 (P’−P)が4のときはP×P’を消した後、P×P’+2Pを消します。

次にいくつか例をあげます。

  最初に消す数 二番目に消す数
 7の倍数を消すとき  7= 49 +7×(11−7)=77
11の倍数を消すとき 11=121 11+11×(13−11)=143
13の倍数を消すとき 13=169 13+13×(17−13)=221
17の倍数を消すとき 17=289 17+17×(19−17)=323
19の倍数を消すとき 19=361 19+19×(23−19)=437
23の倍数を消すとき 23=529 23+23×(25−23)=575
29の倍数を消すとき 29=841 29+29×(31−29)=899
31の倍数を消すとき 31=961 31+31×(35−31)=1085

ここで23と31の倍数を消すときのカッコの中に省略した5の倍数、25や35がでてきます。ですから、最初に2の倍数と3の倍数を省略して数を並べるときに、 5の倍数も省略しましたが、この「二番目に消す数」を計算するときに省略した5の倍数も使うので、注意が必要です。

以上のように『エラトステネスのふるい』をもとに、『2の倍数と3の倍数を省略した方法』を考えてみました。